10天体とアーキタイプを結びつける① 〜太陽、月、水星、金星、火星〜


目次
太陽系に息づくキャラクターたち
星はただの「天体」ではなく、心の深層に住む“人格”でもある——。
心理占星術のリズ・グリーンは、ユング心理学と占星術を融合させ、天体たちをユングの「アーキタイプ」と対応させました。
例えば、火星はウォーリアー(戦士)、月はグレートマザー(母)、土星はシャドウ(影)・・
各天体とアーキタイプ (リズ・グリーンによる対応)
天体 | 対応するアーキタイプ | キーワード |
---|---|---|
①太陽 | ヒーロー(英雄) | 自己、創造性、アイデンティティ |
②月 | グレートマザー(母) | 感情、安心感、内的欲求 |
③水星 | トリックスター(道化) | 知性、言葉、流動性 |
④金星 | アニマ(内なる女性像) | 愛、美しさ、引き寄せ | ⑤火星 | ウォーリアー(戦士) アニムス(内なる男性像) |
闘争心、行動力、本能 |
⑥木星 | セージ(賢者) オールド・ワイズマン(老賢者) |
叡智、導き、精神的成長 |
⑦土星 | シャドウ(影) | 制限、恐れ、試練 |
⑧天王星 | リベレーター(革命家) | 自由、変化、覚醒 |
⑨海王星 | ミスティック(神秘家、夢見る者) | 幻想、融合、直感 |
⑩冥王星 | トランスフォーマー(変容者/冥界の神) | 死と再生、潜在意識、力 |
アーキタイプと、①太陽、②月、③水星、④金星、⑤火星 の対応
① 太陽 ― 「ヒーロー」
あなたは、誰か?
あなたは、何者としてこの人生を生きるのか?
太陽はホロスコープにおいて、精神的・存在的な中核という意味で「中心」に位置づけられます。
リズ・グリーンは太陽を「ヒーロー」というアーキタイプに重ねました。
それは外的な勝利者や称賛を浴びる者ではなく、“自己という神話”を生きる者としての英雄です。
ユング心理学における「個性化のプロセス」──それは、自我と無意識を統合し、真の自己に向かっていく旅路のこと。
このプロセスこそ、太陽の象意そのものです。
ヒーローははじめ、まだ無知で未熟です。
しかし旅の中で試練に出会い、傷つき、問いを抱き、やがて“自己の光”を見出します。
心理占星術において、太陽は“なっていくもの”であって、すでに確立された“性格”ではない。
太陽は「すでにあるもの」ではなく、「これから形づくられるもの」である。
(The Sun is not so much a description of what we are, but what we are meant to become.— Liz Greene)
・・リズはこう語っているのです。

クォッカちゃん
なるほど〜 太陽ってその人の「理想像」であり、魂の方向性みたいなものなんだ

占星術師Yoda
そうだね。だから太陽を読むときは、「この人はこういう性格です」ではなく、「この人はこういう“光”を目指している」という視点で読む必要があるよ。
ヒーローは旅に出ます。
まだ見ぬ“本当の自分”に出会うために。
あなたの太陽は、どんなヒーロー像を目指して輝こうとしていますか?
② 月 ― 「グレートマザー(母)」
あなたの感情がどれだけ激しくても、
「そのままでいい」と抱きしめてくれるものがある。
──月は、その包容力そのものです。
月は、情緒、安全、記憶、養育、共感を象徴する天体。
けれど心理占星術において、月はただ“子ども”のような存在ではありません。
リズ・グリーンは、この月を「グレートマザー」──すべてを受け入れ、抱きしめる母性原理として描きました。
月は感情を生み出すだけでなく、感情を容れ物として“保持する”力でもある。
(The Moon contains and holds emotion — like a psychic womb. — Liz Greene)
この“保持する”という力が、とても重要です。
怒りや悲しみ、脆さや混乱といった未分化の感情を否定せずに抱いておく機能。
心理療法における“コンテイニング”のはたらきが、月なのです。
月は、誰かに与えられる愛や安心の象徴であると同時に、自分が誰かに与えられる愛でもあります。
他者を支えたり、自分自身の未熟さや傷つきやすさを責めずに包んであげる力──それが、内なるグレートマザーです。
成熟した月は自己受容と他者受容の基盤となり、
「感情を否定しないまま、生きていく力」を与えてくれます。

クォッカちゃん
なるほど〜 月って癒されるだけの存在じゃなくて、癒してあげる力があるのか。

占星術師Yoda
そうだね。月は感情を抱きとめる母性的な器なんだよね。
そして誰もが、自分の中にその力を育てることができる。
あなたの中のグレートマザーは、 今日もそっと、感情の波を見守っています。
ケアする力、抱える力、育てる力。
月は、癒しをもたらす“母なる心”なのです。
③ 水星 ― 「トリックスター」
あっちへひょい、こっちへくるり。
水星は、境界線を自由に飛び越える“遊び人”。
水星は、知性、言葉、情報、好奇心、そして機転を司る天体です。
考えること、話すこと、伝えること──
そのすべてが、水星のフィールドといえるでしょう。
リズ・グリーンはこの水星を「トリックスター」のアーキタイプに重ねました。
神話の中では、トリックスターはしばしば嘘をついたり、境界を超えたり、ルールを混ぜ返したりする存在。
でもそこには、単なる混乱ではなく、“流動性”と“知恵”の光が宿っているんです。
トリックスターは、矛盾や曖昧さの中にいることを怖れず、むしろそこから新しいものを生み出す。
(The trickster can live with contradiction and ambiguity, and from it, create insight. — Liz Greene)
水星は、「答え」を出すことよりも、問いを立てる力に近いかもしれません。
「こうじゃないとダメ」という固定観念に風穴をあけて、もっと軽やかに、ユーモラスに、別の見方を教えてくれる存在なんです。
そして、水星は“橋渡しの役目”も持っています。
例えば・・
感情(=月)と意志(=太陽)の間で、
無意識と意識の間で、
個と社会の間で、
その「あいだ」を行き来する柔軟性こそ、水星の力なのです。
ただし、このトリックスターが偏りすぎるとどうなるか…?
言葉だけが先走ってしまったり、
心を置き去りにして、頭だけが暴走してしまったり……
「頭は動いているのに、心がついてこない」という状態になってしまうこともあるんです。

クォッカちゃん
あ〜あるある!考えすぎて動けなくなるやつだ……!

占星術師Yoda
でも水星は本来、軽やかに“つなぐ”存在。言葉、視点、場所、人のあいだを自由に行き来して、風のように流れを起こしてくれる。
あなたの中のトリックスターは、いま、どんな世界を旅しているでしょうか?
その好奇心の風が、きっと何かを変えるはずです。
④ 金星 ― 「アニマ(ラヴァー)」
「好き」「きれい」「素敵」──
ときめく心には、魂の声が宿っているのかもしれません。
金星は、愛、美しさ、快楽、引き寄せの星。
心がときめくもの、美しいと感じるもの、価値を見出すもの──
それらはすべて、金星の領域です。
心理占星術において、リズ・グリーンはこの金星を「アニマ」──内なる女性像のアーキタイプと結びつけました。
同時に、「ラヴァー(Lover)」──愛し、愛される存在としての金星もそこに重なります。
金星は “あなたの魂が何に惹かれ、どんな形で世界と関わりたいか?” を教えてくれる
(Venus symbolizes the kind of experience the soul is seeking through relationship. — Liz Greene)
つまり金星は、ただ「恋愛傾向」を見るだけの星じゃなくて、
自分が人生をどう味わいたいか?
どんなものに美しさを見出すのか?
そうした「価値の感じ方」そのものを映す鏡ってワケだね。
また金星は、ユング心理学でいうアニマ──特に男性の無意識に宿る「女性性」の象徴でもあります。
男性のホロスコープの金星は、恋愛において“理想の女性像”として現れたり、芸術への感受性や、人を魅了する柔らかなエネルギーとしても発現します。
さて、では金星の働きが歪むとどうなるか…?
誰かに認められたくて“いい子”を演じすぎてしまったり、
逆に「愛されなかった」という傷が、拗ねや依存、ナルシシズムとなって表れることもあるんです。

クォッカちゃん
たしかに……「自分を愛してほしい」と思いすぎると、しんどくなるかも……

占星術師Yoda
だよね。金星って「どう愛されたいか」だけでなく、「どう愛したいか」も大切にしてる。受け取るだけじゃない、自分から“美しさを与える力”もあるんだ。
金星は、“心がときめくもの”を通して、人生を彩ってくれる存在。
あなたの中のラヴァーは、どんな「愛し方」や「美しさのかたち」を求めているでしょうか?
⑤ 火星 ― 「ウォーリアー」
やるか、やられるか。
前に進むか、立ち止まるか。
火星は、人生の“推進力”であり、欲望・怒り・行動力といったエネルギーの源です。
「やりたい!」と突き動かされる衝動とか、
限界にぶつかったときに「打ち破りたい!」と立ち上がる力。
そんな原初的な“闘争心”を象徴するのが、この火星です。
心理占星術のリズ・グリーンは、火星を「ウォーリアー(戦士)」というアーキタイプで表現しました。
でもそれは、暴力的な戦士ではなく——
自分自身の境界を守り、道を切り拓いていく意志を持つ存在なんです。
火星のエネルギーが健全に発揮されないと、内向きに抑圧されるか、外向きに破壊的に表現される。
(When Mars cannot be expressed directly, it turns inward as depression or outward as violence. — Liz Greene)
つまり、火星をちゃんと“使えているかどうか”って、とても大事ってこと。
怒りをただ抑えるのではなく、「私はこうしたい」「これはNOだ」と、自分の意志を健やかに表現すること。
火星はまた、ユング心理学でいう「アニムス(内なる男性像)」にも関連づけられます。
特に女性のホロスコープにおいて、火星は「自分の男性的な一面」の象徴であり、
「理想の男性像」としても表れやすいです。
火星をうまく扱えないとき、私たちは“怒りを抑え込む”か、逆に“怒りに支配される”かの極端に揺れがちです。
でも火星は本来、とても生命的で、ポジティブなエネルギーなんです。
やる気、情熱、決断力、スタートする勇気…
火星を自分の味方につけることができれば、あなたの人生のアクセルがぐっと踏みやすくなるはずですよ^^

クォッカちゃん
火星って、怒りとか争いの星かと思ってたけど、「自分をちゃんと出す」ことでもあるんだね〜

占星術師Yoda
うん。火星の役割は、敵を攻撃することじゃなくて、自分の意志と行動を一致させること。火星が動いていないとき、人は無力感に陥りやすい。
あなたの中のウォーリアーは、いま元気に動いていますか?
それとも、どこかで眠ってしまっているでしょうか?
火星のエネルギーを正直に、健やかに、人生の追い風に変えていきましょう!
天体たちは、あなたの内側に生きている
ここまで、リズ・グリーンの心理占星術の視点から、5つの天体(太陽、月、水星、金星、火星)の対応を見てきました。
太陽はヒーロー、月はグレートマザー、火星はウォーリアー……
それぞれの天体はアーキタイプとして、心の深層に生きていて、
彼らは、単なる「性格の一部」ではなく、 あなたの魂の旅に登場する“象徴的キャラクター”なのです。
一般的な占星術では、天体は「どんな性格か」「どんな傾向か」を調べるものですが、
リズ・グリーンの心理占星術では、天体は「どんな心の神話を生きているのか」を語ります。
このコラムを読んで、
あなたのホロスコープにいる天体たちの姿が、少し違って見えてきたなら嬉しいです。
>>次のコラムでは、
残りの5天体 ⑥木星、⑦土星、⑧天王星、⑨海王星、⑩冥王星 をみていきますね^^
参考記事: