10天体とアーキタイプを結びつける② 〜木星、土星、天王星、海王星、冥王星〜


目次
太陽系に息づくキャラクターたち〜続き
前回は、10天体のうち、5つ(太陽、月、水星、金星、火星)をアーキタイプと結びつけました。
今回は残りの5つ、木星、土星、天王星、海王星、冥王星 をアーキタイプに対応させてみましょう。
おさらいですが、リズ・グリーンなどユング系の心理占星術師は、天体たちをユングの「アーキタイプ」と対応させました。
例えば、火星はウォーリアー(戦士)、月はグレートマザー(母)などでしたね
(※ >>前回コラムはこちらを参照)
各天体とアーキタイプ (リズ・グリーンによる対応)
さて、以下の表もおさらいです。10天体とアーキタイプの対応をご確認くださいね^^
天体 | 対応するアーキタイプ | キーワード |
---|---|---|
①太陽 | ヒーロー(英雄) | 自己、創造性、アイデンティティ |
②月 | グレートマザー(母) | 感情、安心感、内的欲求 |
③水星 | トリックスター(道化) | 知性、言葉、流動性 |
④金星 | アニマ(内なる女性像) | 愛、美しさ、引き寄せ | ⑤火星 | ウォーリアー(戦士) アニムス(内なる男性像) |
闘争心、行動力、本能 |
⑥木星 | セージ(賢者) オールド・ワイズマン(老賢者) |
叡智、導き、精神的成長 |
⑦土星 | シャドウ(影) | 制限、恐れ、試練 |
⑧天王星 | リベレーター(革命家) | 自由、変化、覚醒 |
⑨海王星 | ミスティック(神秘家、夢見る者) | 幻想、融合、直感 |
⑩冥王星 | トランスフォーマー(変容者/冥界の神) | 死と再生、潜在意識、力 |
アーキタイプと、⑥木星、⑦土星、⑧天王星、⑨海王星、⑩冥王星
⑥ 木星 ― 「セージ(賢者)」
世界は広い。
この人生には、きっと意味がある。
──木星は、そんな“信じる力”を運んでくる。
木星は、拡大、成長、希望、信念、哲学を司る天体。
「もっと知りたい」「もっと遠くへ行きたい」という冒険心や、「これは正しい」と感じる人生観・価値観にも深く関わっています。
リズ・グリーンは、この木星を「セージ(Sage)=賢者」のアーキタイプと捉えました。
人生を見渡す視点をもち、知識や精神性を通じて「意味」を見出そうとする存在です。
木星は、現実のもっと奥にある“意味”を求める。それは人生をより豊かにするための精神的冒険なのです。
(Jupiter seeks meaning beyond facts — it’s the symbol of our spiritual search. — Liz Greene)
私たちは、ときどき「なぜこんなことが起こるの?」と考え込むことがありますよね。
そんなとき、木星は「そこには学びや意味があるかもしれないよ」と、やわらかく教えてくれるのです。
木星はまた、「導く存在」としても現れます。
尊敬できる師との出会い、宗教・思想・教育などの形で、“知恵の流れ”を受け取る時期にもよく動きます。
木星は、信念の“光”をもたらす一方で、視野を広げすぎて、現実感を失ったり、
あるいは信念に固執して、説教くさくなったりといった「影の顔」もあります。
一般的な占星術では、木星の過剰は怠慢やルーズさとして表れやすいとされるけど、
リズ・グリーンの心理占星術では、“意味への依存”や“信じすぎること”の危うさに注目するんだよね

クォッカちゃん
木星って「ラッキーでのんびり屋」みたいな星って聞いてたけど、リズ・グリーンの解釈ではちょっと違うんだね…!

占星術師Yoda
そうだね。木星とセージ(sage)を対応させて、改めて見直してみるのも面白いかもね
⑦ 土星 ― 「シャドウ(影)」
逃げたい、見たくない、でも──
ほんとうの自分に出会うには、
その「影」をくぐる必要があるのかもしれない。
土星は、制限、責任、時間、恐れ、構造を象徴する天体です。
「ちゃんとしなきゃ」「間に合わない」「まだ足りない」……
そんな焦りや重さを感じるとき、土星が何かを語りかけているのかもしれません。
リズ・グリーンは、土星を「シャドウ」──自分が無意識に抑圧している側面として描きました。
シャドウは怖れの仮面をかぶって現れますが、その正体は“魂の一部”でもあるのです。
土星は、敵ではなく、私たちの自己を鍛えあげる “師” なのです。
(Saturn is not merely the enemy who blocks us, but the teacher who demands we grow. — Liz Greene)
だから土星は、私たちに「成熟する勇気」を求めてきます。
自分の未熟さ、恐れ、足りなさに目を向けさせながら、人生を背負う力を育ててくれる存在です。
土星が働くとき、
人は自己否定に陥ったり、「どうせ自分なんて…」と感じやすくなる時期があるでしょう。
けれどそれは、本当の自分とつながるための“通過儀礼”のようなもの。
自分の弱さと向き合うことは、
自分の強さと出会うことでもある。
そして土星が教えてくれるのは「責任ある自由」と、「自分の意志で引き受ける」ことの尊さなのです。

クォッカちゃん
責任って、なんだか重たく感じるけど……
土星がくれるのって、ほんとは「ちゃんと生きる力」なのかもね。

占星術師Yoda
うん、土星の試練と向き合う勇気をもてば、それは深い安心感へと変わっていくんだ。
あなたの中のシャドウは、何を怖れて、何を守っているのでしょうか?
どうか安心してください。その「影」を照らす光もまた、あなたの内にあるのだから。
⑧ 天王星 ― 「リベレーター(革命家)」
「それは本当に、わたしの選択だろうか?」
——天王星は、眠っていた問いを呼び覚ます。
天王星は、精神的な覚醒や、個としての目覚めを象徴する天体です。
でも、それは表面的な「自由になりたい」という欲求ではありません。
リズ・グリーンは、天王星を「リベレーター」──魂の深層にひそむ“内なる革命家”として描きました。
その革命とは、「社会に逆らう」ことではなく、自分の中の集合的パターンから脱することなのです。
天王星の目覚めは、意識が“集合的無意識の支配”に気づいたときに始まる。
(Uranus awakens us from the collective patterns we are unconsciously living out. — Liz Greene)
・・これ、ちょっと難しい言葉ですね。
例えば、私たちの多くは、無意識のうちに「親の価値観」「時代の空気」「集団の期待」に従って生きています。
それが悪いということではありません。
でもある日、どこかでふと立ち止まりたくなることがあるでしょう?
——「これは“わたし”の人生だろうか?」って。
その瞬間なんです! 天王星が動き出すのは。
天王星の目覚め。
それは外側の世界から認めらることじゃなくて、「私はこっちがいい」と、内側から確信できる自由のこと。
それを得るためには、対人関係や仕事、ライフスタイルに"揺さぶり"が必要かもしれない。
でもそれは、自己が集合的仮面(ペルソナ)を脱ぎ捨てていく過程なんです。

クォッカちゃん
なんとなく「自分らしく生きたい」って思う気持ちは、天王星からやってくるのかもね。

占星術師Yoda
そう。天王星っていうのは「他人の人生」をやめて「ほんとうの自分の人生」を選び直すための星だから。その衝動は、魂の深層からやってくるんだ。
あなたの中のリベレーターは、どんな仮面を脱ぎ、どんな自分に目覚めようとしている?
天王星は、その始まりの扉を開く鍵を握っていますよ。
⑨ 海王星 ― 「ミスティック(神秘家)」
私は、どこまでが“わたし”で、
どこからが“あなた”なのか──
海王星は、その境界線をゆっくり溶かしていく。
海王星は、幻想、夢、霊性、共感、犠牲、融合を象徴する天体です。
現実と非現実のあいだにゆらぐこの星は、目に見えない世界や集合的な感情フィールドを支配しています。
リズ・グリーンは、この海王星を「ミスティック」──神秘家・夢見る者のアーキタイプに重ねました。
彼女はこの星を、魂が“全体性”へと戻ろうとする働きとして描いています。
海王星は、個を超えて“すべてとひとつになりたい”という魂の欲望を映し出す。
(Neptune reflects the longing of the soul to dissolve boundaries and return to the greater whole. — Liz Greene)
私たちは日常の中で、どうしても「自分と他人」、「現実と夢」
「善と悪」「理性と感情」といった二元的な境界に囲まれて生きています。
でも思い出してみて欲しい。
ふとした音楽に涙したり、映画で誰かの痛みを自分のことのように感じることはない?
あるいは、恋人との境界線が溶けて無くなりそうな瞬間は?
そこでは、あなたと世界とのあいだの輪郭がやわらかくなるのです。
それがまさに、海王星のエネルギーなのです。
海王星は、芸術・奉仕・スピリチュアルな活動を通して「個を超えた感覚」へと誘います。
それは“癒し”であり、“祈り”であり、“美の陶酔”でもあるのです。
ただし……海王星の作用が強くなりすぎると──
現実逃避、依存、被害者意識、犠牲的関係……
「境界が曖昧すぎることの危うさ」も浮上してきます。

クォッカちゃん
なんとなく「自分が自分じゃない感じ」がするときって、
もしかして海王星が揺らしてるのかも……?

占星術師Yoda
海王星の影響下では、「自分の輪郭」を保つのが難しくなるんだよ。でも“意識的なつながり”を持てると、深い癒しとインスピレーションが湧いてくる。
あなたの中のミスティックは、どんな“全体性”に憧れている?
その夢や感受性の中に、魂の奥深くとつながる扉があるのかもしれません。
⑩ 冥王星 ― 「トランスフォーマー(変容者)」
すべてを失ったその先で、
ほんとうの「あなた」が、静かに息をしている。
冥王星は、死と再生、破壊と再構築、無意識の力を象徴する天体です。
それは「終わらせる」星ではなく、「終わらせたものの先で、何かを再び生かす」星なんだ。
心理占星術においてリズ・グリーンは、冥王星を「トランスフォーマー」──変容をもたらす力のアーキタイプと呼びました。
冥王星が象徴するのは、“死んだふりをしている自我”が、魂の本質と向き合うプロセス。
(Pluto brings to the surface what the ego has buried, so the psyche may truly transform. — Liz Greene)
心理療法の中でも、深い変容はたいてい、喪失や崩壊の体験を通して始まります。
何かを失い、何かが壊れ、「もう戻れない」と感じたとき。
それは“終わり”ではなく、真の再出発が始まる予兆なのかもしれません。
冥王星は、私たちの奥深くに押し込められた感情や幼少期のトラウマ、
コントロールへの執着や無力感といった、手つかずの“影”を根こそぎ揺り動かします。
それは、とても痛みを伴う作業かもしれない。
でもその“心理的な死と再生”を通して、私たちはより本質的な自己に触れていくのです。

クォッカちゃん
そっか…「変わる」っていうより、
「一度壊れて、そこからもう一度育ち直す」みたいなことなんだね。

占星術師Yoda
そうだね。冥王星は「魂の深層で行われる心理的な手術」のようなもの。その先には、本当の力と癒しが眠っている。
冥王星がもたらす“破壊”は、真の癒しのための解体でもあります。
あなたの中のトランスフォーマーは、何を終わらせ、何を生まれ変わらせようとしているでしょうか?
天体をアーキタイプとして捉えるということ
ホロスコープの天体を、「アーキタイプ」という視点から見てみると、
少し違った光が差し込みます
たとえば、「水星ってどんな天体なんだろう?」と思ったとき。
ただ“知性”や“コミュニケーション”と覚えるのではなく、
「そういえば、水星はユング心理学でいう“トリックスター”に対応していたな〜」
……と連想できたら、解釈の余地がグッと広がりますよね?
トリックスターとは、矛盾に生き、ルールを越え、混乱を通して“新しい視点”をもたらす存在。
そこから、「水星の持つ“言葉の力”とは?」「境界を越えるって何?」「情報って混乱も生むのでは?」と、深掘りしていけるのです。
アーキタイプって、天体の象意を、新たな視点から深掘りするツールです。
そして、天体を神話として読み解いていくためのヒントにもなるのです。
もしこれから、ホロスコープのある天体について考えるとき、
「この天体はどんなアーキタイプなんだろう?」って考えてみると面白いですよ。
きっと新たな視点が見つかったり、あなた自身の深層にある物語と響き合うことになるでしょう。
参考記事: